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【よくある言動でもアウト?裁判所が認定したパワハラと慰謝料命令の実例】(2025/6/8)

こんにちは。今回は、今年5月に話題になったパワハラ判決についてご紹介します。

東京都地裁は、ある建設系企業に対し、労働者へのパワハラ等によって慰謝料160万円の支払いを命じました。この裁判では、いずれも「職場でありがち」と思われがちな言動が、不法行為=違法と判断されました。


◆ 不法行為と認定された“ありがちな”言動

  1. 介護目的の有給休暇申請5日間に対し、2日のみ許可

    • 実母の入院という正当な理由にも関わらず、会社側が2日しか認めなかった。

  2. 残業削減に関して、注意のみで具体的な対策を取らなかった

    • 「気をつけてね」で終わる残業削減。実際の労働時間は改善されず。

  3. 会議で「GWに休めると思うなよ」と発言

    • 取締役が労働者に対し、繁忙期での休暇取得を牽制するような発言を公然と行った。

  4. 「年度末なんだから当たり前」と他従業員に聞こえる状況で発言

    • 過重労働に関する訴えに対し、上司が当然視するような発言を行った。

  5. 休日に業務指示をして出勤させた

    • 取引先からの依頼を理由に、事前の合意なく休日出勤を命じた。


◆ どれも、現場ではよくある光景では?

実際に中小企業や現場系の業界では、こうした言動は珍しくありません。

  • 有給を自由に取れない

  • 繁忙期は長時間労働が当たり前

  • 上司の強めの口調

  • 休日の呼び出し

これらは「指導」「協力要請」のつもりであっても、受け手が精神的苦痛を感じ、かつ組織的・継続的であれば、不法行為と評価され得るというのが今回の判決の本質です。


◆ 判決のポイント:個別ではなく“総合評価”

裁判所は、これらの行為を1つ1つではなく、積み重ねとして評価しました。すなわち:

  • 単発ではグレーでも、継続すればブラック

  • ハラスメントを止めず、放置していた会社の体質が問題

  • 安全配慮義務(長時間労働の是正など)違反も含まれる


◆ 社労士から見た教訓:これは他人事ではない

労務管理において、「ありがち」な言動であっても、トータルで見れば訴訟リスクにつながります。

🔸職場のこんな“クセ”、ありませんか?

  • 有給は「繁忙期以外で」と制限している

  • 「みんな残ってるんだから」と長時間労働を容認

  • 「そんなの甘えだ」と発言してしまう

これらは、いずれもパワハラや安全配慮義務違反に発展する恐れがあります。


◆ 最後に:労務トラブルの“芽”を見逃さない

社労士としてできることは、

  • ハラスメント研修の導入

  • 有給管理や残業対策の仕組み化

  • 管理職への対応指導など、企業を守るための仕組みづくりです。

「これくらい大丈夫」が命取りになる時代です。労務リスクを“見える化”し、安心して働ける職場づくりを支援していきましょう。

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